はじめに
最近よく耳にするようになった「非認知能力」という言葉。
テストでは測れない「やる気」「粘り強さ」「コミュニケーション力」など、目に見えにくいけれど、人生を大きく左右する力だと言われています。
TBSの人気番組『まないく』では、元外交官で星槎大学客員教授・Z会グループ新学力研究開発アドバイザーの北川達夫さんが「非認知能力」の正体と、家庭でできる育て方をとてもわかりやすく語ってくれました。
この記事では、その内容をベースに、
- 非認知能力とは何か
- なぜそれが年収など将来に関係するのか
- 家庭で今日からできる育て方
- 褒め方の注意点
- そして実は「親自身」も非認知能力を育てられるということ
をじっくり解説していきます。
1. 非認知能力とは?「点数化できないけれど、大切な力」

北川先生の言葉を借りると、非認知能力とは「自分を最強にする力」。
「最強」とは他人と比べて優れているという意味ではなく、「自分の中でくじけず前に進む力」を指しています。
非認知能力の具体例
北川先生によると、非認知能力とは以下のような社会的・感情的なスキルの総称です:
- 問題解決力
- 批判的思考力(クリティカルシンキング)
- 協働力(チームで協力する力)
- コミュニケーション能力
- 主体性(自ら考え、動く力)
- 自己管理能力(感情や時間のコントロールなど)
- 実行力(やろうと思ったことをやり切る力)
- 統率力(リーダーシップ)
- 探究心(なぜ?を追いかける姿勢)
- 共感性(人の気持ちを想像する力)
- 道徳心・倫理観・規範意識(善悪の判断、社会のルールを守る意識)
- 公共性(自分以外の人や社会への視点)
- 独自性(自分らしさを活かす力)
これらの力は、学力のようにテストで点数化するのが難しいですが、人生を豊かにする“人間力”のようなものといえるかもしれません。
2. 非認知能力が将来の年収を左右する理由
ノーベル経済学賞のジェームズ・ヘックマン教授は、非認知能力の重要性を研究しました。
ヘックマン教授の調査
- 3〜4歳で幼児教育を受けた子どもたちを40歳まで追跡
- 学歴・年収・犯罪率などで明確な差が!
この調査では、「読み書き」などの認知能力よりも、「やる気」「自制心」「他者との関わり方」などの非認知能力の方が将来に強く影響していたと分かっています。
さらに、認知能力の効果は8歳ごろで追いつかれるのに対し、非認知能力の効果は持続するという驚きの結果がわかりました。
3. 家庭でできる!非認知能力を伸ばす3つの方法
方法① 「挑戦」と「失敗」にOKを出す

子どもが何かをやってみようとしたとき、大人はつい「危ないからやめよう」と止めたくなります。
でも大切なのは、挑戦する姿勢そのものを応援すること。
そして、失敗してしまったときには、ぜひこんな声をかけてみてください。
「よかったね!これは“うまくいかない方法”が分かったってことだね。別の方法を試そう!」
これは発明王エジソンが言ったように、失敗を“前進するための経験”としてとらえる考え方です。
この積み重ねが、「自分で考え、失敗してもめげずにやり直す力」を育てます。
方法② 振り返りと「他責思考をやめる」習慣

北川先生が強調していたのが、自分の行動を「振り返る」ことの大切さ。
そしてそのとき大事なのは、
「誰のせい?」ではなく「何のせい?」を考えること。
失敗を他人のせいにするのではなく、自分にできること、自分が関わったことに目を向ける。
たとえば子どもにこう問いかけてみてください。
- 「うまくいかなかったのは何が原因だったんだろう?」
- 「もしかして自分の行動で変えられたところはあった?」
こうした内省の力こそ、非認知能力の土台となる「自分と向き合う力」です。
方法③ 読み聞かせや物語の共有で「共感力」を育てる

絵本や物語の中には、自分とは違う価値観を持った登場人物がたくさん登場します。
この「自分と違う誰か」を理解しようとするプロセスが、共感力・想像力・人間関係スキルを育てるのです。
読み聞かせ中の会話や、映画鑑賞後のひとことがポイント!
- 「この子、なんでこんなこと言ったんだろう?」
- 「自分だったらどうするかな?」
こうしたやりとりの中で、**物語を通じた“イメージトレーニング”**が自然に行われていきます。
4. 褒め方に落とし穴?自尊感情との関係とは

非認知能力を発揮するうえで、一番大事な土台になるのが「自尊感情」。
北川先生も、「自尊感情がないと、非認知能力を発揮できない」と明言していました。
自尊感情は2つの層からできている
- 基本的な自尊感情:
他人の評価に関係なく「自分には価値がある」と感じられる力。
→ これは外から育てるのが難しいけれど、一度育つととても安定しています。 - 社会的な自尊感情:
褒められたり、結果が出たりして「自分はすごい」と思える力。
→ 育てやすいけれど、他人の評価に左右されやすく、とても不安定です。
危険なのは「外側だけ大きく、中がスカスカ」な状態
たとえば、成績が良いから褒められて、自信を持っていた子が、受験や進学で壁にぶつかるとどうなるでしょうか?
「自分はダメな人間かもしれない」
「もう価値がないんじゃないか」
と、大きく落ち込んでしまうかもしれません。
これは、社会的な自尊感情だけが膨らみすぎて、基本的な自尊感情が育っていない状態です。
褒めるときはどうすれば?
- 結果ではなく、努力や工夫を見よう
→「がんばったね」「工夫していたね」 - 存在そのものを受け入れるメッセージを届けよう
→「いてくれて嬉しい」「あなたは大切な人だよ」
子どもが「ありのままの自分でも大丈夫」と感じられること。
それが、すべての非認知能力の出発点になるのです。
5. 親こそ、非認知能力を育てたい
この記事を読んでいて、「これ、自分にも当てはまる…」と思った方、いませんか?
実は私もその一人です。
番組の中で北川先生が言っていた、
「感情をコントロールすることが、最も大事な非認知能力」
この言葉にドキッとしました。
子どもがこぼした。泣きわめいた。スムーズに出かけられない。
…そんな日常の中で、私たち親も「感情のコントロール」を試される毎日ですよね。
でもこれもまた、「私たち自身の非認知能力を伸ばすチャンス」なのかもしれません。
子どもと一緒に、挑戦して、失敗して、振り返って、また前を向く。
非認知能力は、親子で一緒に育てていくものなんだと思います。
6. まとめ:非認知能力は、日常の中で育つ
子どもの未来にとって大切な非認知能力は、特別なことをしなくても、日々の関わりの中で育てられます。
- 挑戦と失敗に「OK」を出す
- 振り返って「何が原因だったか?」を考える
- 絵本や物語で共感力を育てる
- 褒め方を見直す
- そして、親も自分自身の心と向き合ってみる
焦らなくて大丈夫。うまくできない日があっても大丈夫。
非認知能力の本質は「うまくいかない日も含めて、自分と向き合い続ける力」なのだから。
★この記事は、TBSの動画番組『まないく#5』の内容を参考にまとめました。
興味のある方は、ぜひ元の動画もぜひご覧ください!
▶️ 子どもの年収に差→「非認知能力」は家庭で伸ばせる/ 褒める子育てに落とし穴|TBS CROSS DIG with Bloomberg
北川先生の書籍はこちら↓(アフィリエイトリンクを使用しています)
コメント